三十八歳、IT企業のプロジェクトマネージャー。僕の人生の歯車が狂い始めたのは、リモートワークが常態化し、日に日に増えていくオンライン会議の画面に映る自分の姿に愕然とした日からでした。画面越しの自分は、実年齢よりも遥かに老けて見えました。原因は、明らかに後退した生え際と、薄くなった頭頂部。かつては自分の容姿に無頓着だった僕が、会議中は常に自分の映り具合を気にし、発言もどこか自信なさげになっていることに気づきました。このままでは仕事のパフォーマンスにも影響する。危機感を覚えた僕は、インターネットで「薄毛治療 最新」と検索しました。そこで目に飛び込んできたのが「自己多血小板血漿(PRP)療法」という言葉でした。自分の血液を使って髪を再生させる、という響きに、最初は半信半疑ながらも強く惹かれました。薬を飲み続けることへの漠然とした不安があった僕にとって、自己治癒能力を活用するというコンセプトは、非常に魅力的に映ったのです。カウンセリングで医師から詳しい説明を受け、マイクロスコープで見た自分の頭皮の惨状に改めてショックを受けながらも、僕は治療を決意しました。自分の未来への投資だ、と。初めての治療日、腕から採血され、それが遠心分離機にかけられて黄色い液体(PRP)に変わっていく様を、僕は固唾をのんで見守っていました。そして、それを頭皮に注射する。チクチクとした痛みはありましたが、それ以上に「これで変われるかもしれない」という期待が勝っていました。数回の治療を終え、半年が過ぎた頃。劇的にフサフサになったわけではありません。しかし、シャンプー時の抜け毛は明らかに減り、髪一本一本にハリが出て、根元が力強く立ち上がるようになりました。何より変わったのは、僕の心です。オンライン会議の画面に映る自分を、もう恐れなくなりました。自信を持って意見を述べ、チームを引っ張っていける。僕が最新治療に求めていたのは、失った髪の毛そのものよりも、髪と共に失いかけていた「自信」だったのだと、今ならはっきりと分かります。